「超」整理法 野口悠紀雄著 中公新書


90年代前半にベストセラーになった本なのでご存知の方も多いと思います。私も当時読んで、「とにかく時間の順に並べる」という単純明快さに感動したことを覚えています。ただし感動したのはそこ(第1章)だけで、ほかの部分、特にパソコンを使った整理法の説明は全く蛇足だと思っていました。(なにしろ当時私はパソコンを持っていなかったのです)

そのうちにパソコンを使うようになって、ファイルが増えて収拾がつかなくなった時、「超」整理法を思い出してあみだしたのが「月フロッピー方式」です。この方式で整理するようになってから、ファイルをさがすという無駄な時間がほとんどなくなり、われながらいい応用法だと思っていました。

ところが・・・今回HPに紹介するにあたって「超」整理法をめくってみたら、なんと同じ方法が書かれているではありませんか。(「作ったすべてのファイルを、内容と無関係に、まったく機械的に、一つのフロッピーに作成時間順に入れていく」p.107)

愕然です。

私は本で読んだという事実を忘れて、内容だけを覚えていたのでしょうか。いまでも自分で考えついた方法だと信じているのですが・・・。そういえば文章を書くときも、自分のオリジナルのつもりが実は前にほかの本で読んだ文とほとんど同じになっていることが時々ありますが、こういうことは意外にたくさんあるのかもしれません。

ところで、あらためて読んでみて驚いたことはほかにもいくつかあります。

「電子メールが一般化するまでは、ファックスを基本的な連絡手段にすべきだと思う」p.100

「もし、音声をパタン認識して直接にコンピューターのテキストファイルに変換できたら、知的作業の基本を覆えすほどの技術になるだろう。現在はSFの世界の技術だが、なんとか実現できないものだろうか」p.197

もちろん今では電子メールは誰もが使う一般的な通信方法で、音声認識ソフトも実用化しています。「超」整理法が書かれてからほんの数年のことです。コンピューターの進歩の速さにはあらためて驚いてしまいます。

(1998年記)

 

2002.4.5.

月フロッピー方式と超整理法について、もう少し考えたことを、ダカーポの連載エッセイ(490号、2002年4月17日発売)に書きました。