【4360】対人恐怖症だと言われたのですが、統合失調症ではないでしょうか

Q: 20代女性です。私は、小学生頃から友人達と家で会う分には話せるのですが、学校に行くと一言も話すことが出来なくなる子供でした。自分でも家ではむしろぺらぺらと喋るのに、なぜこんなに外に出ると会話ができないのか不思議であり、そのことで同級生にからかわれたりすることが苦痛でした。
高校卒業後に学校のカウンセラーの方に紹介された精神科にかかるようになり、そこで、はっきり言われたわけではありませんが、私の訴える症状には対人恐怖症があると説明されました。 私は顔見知り程度の人が最も苦手であり、人に自分のことが知られていく感じが苦手なため、その場限りの付き合いなら緊張も少ないが、ずっと付き合っていくことが怖い等があります。 その当時処方されていた薬には、デプロメール、デパス、ジェイゾロフト、メイラックス等で、薬はたびたび変わりました。 現在は何も処方されておらず、「薬の必要は特になく、薬で治るというようなものではない」というのがその理由のようです。 最近では、昔よりは症状も改善し、人と会話をしたり笑ったりも出来るようになってきました。

ずっと、自分は対人恐怖症なのだろうと特に迷いもなく思ってきたのですが、統合失調症の症状を見て自分にも思い当たる部分があることに気付きました。 例えば、周りが自分の悪口を言っている気がするというのは、昔から私が悩んできたことであり、主治医にも度々話してきたことでした。 それを話す度に、それは本当に聞こえるのか、それとも気がするだけかと訊ねられていたので、先生も統合失調症を疑っていたのかと気付きました。 自分は周りに嫌われている、疎ましく思われているとつい考えてしまうところもあります。 ただその思いは学生時代は非常に強かったのですが、社会人になった今、全くないわけではありませんが、その頃よりは軽くなりました。 実際に声が聞こえてきたりということはありません。 私が、統合失調症ではないかと不安に思うのは、私の兄が実際に統合失調症であることも理由にあります。兄は、高校卒業後、幻聴等を訴えるようになり、しばらく通院していたのですが、ここ2、3年は通院も拒否し家にこもるようになってしまいました。 兄弟に統合失調症の患者がいた場合、罹る率は高くなるのでしょうか? また、今は統合失調症でなくても、対人恐怖症から統合失調症になったりするものなのでしょうか。

 

林: 統合失調症の可能性が十分にあると思います。理由は質問者本人が、自分が統合失調症ではないかと考える根拠として挙げている症状、すなわち

周りが自分の悪口を言っている気がする

自分は周りに嫌われている、疎ましく思われているとつい考えてしまうところもあります。 

などです。これだけではしかし、単なる過敏との区別が困難ですが、
ここに

私の兄が実際に統合失調症である

という遺伝的素因があることが加わることで、統合失調症の可能性は大きく高まります。

兄弟に統合失調症の患者がいた場合、罹る率は高くなるのでしょうか?

もちろん高くなります。

今は統合失調症でなくても、対人恐怖症から統合失調症になったりするものなのでしょうか。

対人恐怖症が統合失調症発症の前駆症状であったと表現する方が正確でしょう。
この【4360】のケースが対人恐怖症と診断されたときの症状は、確かに対人恐怖症に一致しているようですが、より漠然と、あるいは対人恐怖症とは異なる色彩の症状として「人が怖い」という症状が、統合失調症の前駆症状であることは非常によくあります。

(2021.8.5.)

05. 8月 2021 by Hayashi
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