【3686】双極性障害と診断され措置入院しましたが、統合失調症の恐怖に脅える毎日です

Q: 30代前半の女性会社員です。双極性障害と性同一性障害と診断され、数年前に措置入院の経験があります。現在統合失調症の恐怖に怯えておりますので、ご相談させて頂ければと思います。
今までの経過を簡単にお話しします。

私は香港で男の子として生まれ、小さい子供の頃から優等生・模範生でほとんど挫折もなく、また幼少期より思考が好きで哲学的発達が早く、いわば同年齢・立場の者(クラスメイト、同僚など)より常に優位に立つ人でした。しかし段々と考えすぎの傾向が現れ、小学校高学年の頃から自分の(時折病的な)神経質な性格に気付き、中学校の親しい友人に「あなたは神経質すぎて精神病的だ」と言われたこともあります。高校の先生に「頑張りすぎていずれ伸びすぎた輪ゴムのように切れてしまいかねない」とも言われました。人間関係は苦手で、普段は几帳面で引っ込み思案ですが、小学校高学年から極端な発想が増え、時々作文で変なことを書くようになり(例えば「お母さんと乗った電車で妊婦さんに席を譲る」という題で「席を嫌々譲りながらも親子で相手の嫌味を巧みに言う」という内容にしてしまうなど)、同時に不眠が発症し慢性化していきました。高校の時、学校が提供した心の健康のプログラムで、初回のテストで担当の心理士に「問題あり」とされて親との三者面談になったこともあります。また、占い的なことへの執着や変な決まり事なども見られるようになりました。

大卒後、奨学金をもらって日本の大学院に進学しましたが、アジアトップと言われる学府(東京大学)の研究仲間には自分に勝るとも劣らない大変優秀な人が多く、自分の長年の優位性が揺るいで焦りました。その中で、修士1年の頃に初めて精神科を受診することとなりました。必死に勉強して不眠不休で文献を読んだり論文を書くうちに、頭に変な「熱」みたいな塊ができるのを感じ、徐々に自分と周りの間にまるで「膜」ができて現実味を失ったような感覚に陥り、身体的にも皮膚の感覚がおかしくなり麻痺するようになりました。ゲシュタルト崩壊のようにすべてのものが一つのまとまりではなくなりもっとも原始的で根源的な分子に崩壊され、常に(特に目を閉じた時には)宇宙の原始的な分子が最初から世界を構築するような感覚になりました(目を閉じた時には上記のビジュアルが浮かびました)。世界のすべてが不確かになり、常時目を開いていないと自分の存在が確認できず耐えられないため、何日も寝ずに過ごしましたが、全く眠いとは思いませんでした。自分がおかしい、このままだと狂ってしまうと恐怖した私は、なんとか平静を装って大学の保健センター(精神科)に行きました。そこで双極性障害と診断され、リーマスやデパスを処方されました。しかし、当時はほとんど診察がなく、「眠くない」ということだけで躁と言われた感じがありますし、その後躁転(寝なくても元気など)に似た症状が一度も出ていないので、私自身その判断を疑っているのは事実です。 症状が数日で収まり、その後は薬を飲まず精神科にも行かなくなりました。しかし不眠症は悪化していき、性にかかわる悩みもあるので、博士課程の頃に再度精神科に行きました。今回は保健センターではなく個人経営のクリニックにかかりました。2007年、性同一性障害と診断され、ホルモン療法を開始するとともに、不眠症・うつ病の治療も今まで継続しています。
そして4年前、X-4年の年始に大きな崩れが訪れました。一週間にわたって一睡もできない極端な不眠で情緒不安定になり、些細な人間関係上のことで怒り狂って、護身用の警棒を使って見境なく家中の家具や携帯を破壊した末、自分が怖くなり警察署に行って保護を求めました。精神科病院に連れて行かれて、「相手を殺したい」と話したら、措置入院になり、2週間拘束されて保護室のベッドの上で過ごしました。ちなみに退院時の診断書には傷病名が「神経衰弱」と記されていました。 その後は就職して、大きな支障もなく働いていましたが、全体的には段々と気力がなくなり、面倒くさがり屋になり、几帳面のはずなのに部屋が荒れ放題の状態になり掃除も全くしなくなりました。
そしてX-1年秋からうつ病が急速に悪化して、今年X年の今から2〜3ヶ月前の期間には普通に出勤することもできなくなり、無断欠勤や大幅な遅刻を繰り返していたので、ついに会社の限界を越えました。先月から自宅勤務という形で香港に帰り、実家で病気休養をすることになりました。香港滞在は「症状が良くなるまで」ですので、日本に戻る予定は未定です。

長くなりましたが、本題はここからです。私は2、3年前から、なぜか妙に「統合失調症」という病気が気になって、気が付けば統合失調症関連の情報を調べています。「勘」ではありますが、統合失調症という病気がなぜか妙に自分に重なるように見えます(患者に多い典型的な性格や発病に至る過程など)。そして少しずつ本当に怖くなり、今は統合失調症じゃなくてもいつかはそうなっちゃうんじゃないか、そもそも今の自分にはすでに発病の要因を満たしているんじゃないか、あるいは自分が統合失調症になるかもって恐れていてストレスが溜まっていくうちに本当になっちゃうんじゃないかって、とても心配になっています。ことあるごとに「統合失調症の患者ならこうだ」ということを想像し、自分に重ねて「まだ症状が出ていない」ことを確認しています。無意識に患者の感覚(幻聴など)も想像してしまいます。 やっぱり自分の成長を省みると、かなり異常な部分があるのではないかと思わざるを得ません。妄想ではありません(幻覚もありません)が、かなり前から「大きな洋館に住んでいて、優しいご主人様とメイドさんたちに囲まれて暮らしている」という空想をしていて、よくぬいぐるみなどモノと話し、また独り言も多く、よく一人で変な声を出します(母や妹にも指摘されましたが、なかなかやめられません)。小学校の頃からある変な想像は今やエスカレートしていて、街を歩く時などに周りの人たちを残虐に殺したりする想像をします。またよく人の後ろで指さしたり呪ったりします。ニュースなどで他人の死を知ったり、あるいは死ぬのを想像すると、嬉しくなっちゃいます。匿名のインターネットで毎日、他人の死を喜んだり呪ったり、あるいは人を激しく侮辱したりなどの過激な書き込みをして、または掲示板を荒らしては喜んでいます。普段は基本的におとなしく生真面目で優秀なので、私が告白しなければこういう変なところを気付かれることもないかと思いますが、自分がおかしいと前から自覚していて、「これはどんな病気だろう?」「おかしさが増幅していくといずれ統合失調症になるだろうか?」と悩み苦しんでいます。 これまでの性格や病歴、そして今の状況を省みて、現在の私はどういう状態(病気)かご見解をお聞かせ頂けませんでしょうか?修士1年の頃に発病したのはどういう病気でしょうか(本当に躁うつ病でしょうか)?また、このままでは(常に恐怖しているというストレスもあって)統合失調症になるでしょうか?統合失調症の予防策はどういうことがあるでしょうか?今の恐怖している私はどうすれば良いのでしょうか? 長くなった上、質問が多くて申し訳御座いませんが、人生にかかわる大事なご相談ですので、ご回答頂ければ大変幸いと存じます。どうぞ宜しくお願い致します。

 

林: 統合失調症らしい症状が確かにあるものの、双極性障害らしい症状も確かにある、というケースは少なからずあり、診断は統合失調症であったり、精神病症状を伴う双極性障害であったり、統合失調感情障害であったりします。これらの診断名の違いは診断基準に基づくのが正式ですが、実際には診断名の違いはあまり重要でなく、「統合失調症の要素も双極性障害の要素もある」という表現が最も事実を反映していると言えるでしょう。この【3686】もそんなケースかもしれません。
そして質問者は

統合失調症という病気がなぜか妙に自分に重なるように見えます(患者に多い典型的な性格や発病に至る過程など)。そして少しずつ本当に怖くなり、今は統合失調症じゃなくてもいつかはそうなっちゃうんじゃないか、そもそも今の自分にはすでに発病の要因を満たしているんじゃないか、あるいは自分が統合失調症になるかもって恐れていてストレスが溜まっていくうちに本当になっちゃうんじゃないかって、とても心配になっています。

というように、ご自分が統合失調症ないしはこれから統合失調症を発病するのではないかと心配され、それが今回の質問のポイントになっています。

けれども質問者の恐怖は無意味です。なぜなら、質問者の症状には、質問者本人が自覚しておられる通り、すでに確かに統合失調症の色彩があるからです。
質問者が統合失調症という診断を恐れるのは、質問者が統合失調症という病気に対して偏見を持っておられるからだと思います。「統合失調症と診断がつけば重大な恐ろしい病気。診断がつかなければそうではない」と考え、ご自分が統合失調症ではないという信じることで心の安心を得ようとしておられるのではないでしょうか。
けれども「統合失調症と診断がつけば重大な恐ろしい病気。診断がつかなければそうではない」は明確な誤りであって、そのような診断名にこだわるのではなく、「統合失調症の要素も双極性障害の要素もある」という事実を受け止め、これからも治療を続けていくことが最善です。

(2018.6.5.)

05. 6月 2018 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 躁うつ病 タグ: , |