【3626】私は統合失調症だったのでしょうか

Q: 20代男性です。
小学生の頃、被害妄想に悩まされていました。
(1) 間違って女子更衣室を覗き込んでしまったのをきっかけに自分は同学年の女子生徒に陰口を言われているのではないかと思うようになりました。無人だったので実際誰かに危害を加えたわけではないので全く罪悪感を感じる必要はなかったにも関わらず、常に怯えながら生活するようになりました。
(2) コンビニで漫画雑誌を立ち読みしていたところをクラスの生徒に見られただけなのに、それを卑猥な雑誌を読んでいたと勘違いされて言いふらされているのではないかと疑ったりしました。
(3) 家にある3つあるはずのコップがたまに2つになったり1つになったりして何者かが侵入して隠しているのだと思いこんでいました。
(4) またそれを見て困惑している私の様子を、家の何処かに隠しカメラを設置した何者かが見てあざ笑っていると思っていました。
他にも色々な妄想に取りつかれていたような気もしますが、詳しく思い出すことができるのはこの4つぐらいです。

幸い(3)や(4)のようなあまりにも非現実的な妄想は、小学生のうちに「現実的に考えてありえない」と考えることで打ち消すことができるようになりました。
でも他人が自分に向ける感情についての考えは、今でも完全に打ち消すことができません。(1)や(2)のように可能性を100%否定することはできないので。
あと、このころは友人から無表情で怖い、とよく指摘されていました。空気が読めないこともよく指摘されていました。
中学校生活は学校に行ったり行かなかったりの繰り返しでした。毎年1学期はほぼ毎日出席することができたのですが、2・3学期になると半分ぐらいしか登校できていなかったと思います。
学校に行きたくないという感情は小学校の終わりごろから抱くようになり、中学校1年生のときに部活の顧問に対して夏休みの宿題をやっていないのにやったと嘘をついて怒られたことをきっかけに、休むようになりました。
中学生のときも相変わらず女子生徒のことは怖かったです。
高校は全寮制の学校に進学しました。中学の頃はなるべく空気を読んだふるまいを心がけていたのですが、それがなんとなく感じている生きづらさの原因なのではと思い、思ったままに行動するようになったのですが、そのせいかなかなか友だちができず、唯一できた友達も私に嫌気が差したのか完全無視を決め込まれるようになってしましました。この出来事は今も続く「普通に振る舞わなければならない」という強迫観念を抱くきっかけになりました。高校生のころから人間不信がひどくなっていきました。
その後大学に進学するも、「普通の人」に囲まれて生活するのに耐えられず1ヶ月もしないうちに大学には行かなくなりました。翌年には退学して就職したのですが、上司に怒られるうちに精神が不安定になり、そのせいでミスが増え、また上司に怒られるという負のループに陥ってしまい、限界を感じたので退職、精神科を受診しました。
このときは鬱とADHDを疑っていたのですがADHDは心理検査を受けたものの診断は下りず、鬱の方は半年間(デパスとセルトラリン、頓服でエビリファイを処方された)治療を受けるも改善せず、医者の方から薬物療法の中断を宣言されました。私は薬の種類を変えてみることを提案したのですが、却下されました。
そのあと光トポグラフィー検査を受けてみたのですが、どの典型的なパターンとも合致せず曖昧な結果に終わりました。
そして今に至るのですが、アルバイトはなんとか続いているもののいつまたダメになってしまうか分からず、妄想に取りつかれていたころから続く漠然とした違和感、不安、無気力を抱えたまま過ごすのに疲れてきました。

私は統合失調症だったのでしょうか?
統合失調症だったとしたら今は治っているのでしょうか?
医者に行くべきですか?
行くべきなら医者に何を伝えるべきですか?

 

林: この【3626】の方が体験された内容は、ARMS (At Risk Mental State)に一致するものです。ARMSの文字通りの意味はともかく、これは「統合失調症の前駆症状疑い項目」であると言えます。統合失調症との関係は、あったとしても「前駆症状」で、しかも「疑い」ですので、

私は統合失調症だったのでしょうか?

このご質問への答えは「いいえ」です。
けれども、「統合失調症の前駆症状の疑い」はあったと言えます。

統合失調症だったとしたら今は治っているのでしょうか?

「統合失調症だった」とは言えないので、このご質問は成り立たないのですが、現在も精神的な不調が続いていることからすると、かつての状態を何と名付けるにせよ、「今は治っている」とは言えないでしょう。

医者に行くべきですか?

このご質問に対する答えは難しいです。すでに一人の医師から 薬物療法の中断を宣言され ているわけですから、別の医師にかかっても同じことになる可能性は十分にあるでしょう。

私は薬の種類を変えてみることを提案したのですが、

私ならこのご提案に賛同したと思います。もっとも、

妄想に取りつかれていたころから続く漠然とした違和感、不安、無気力を抱えたまま過ごすのに疲れてきました。

この の内容と程度が問題で、それほど重くなければ、薬によるデメリットのほうが大きいという判断になるかもしれません。が、少なくともこのメールから判断する限りは、この【3626】のケースは薬によるメリットのほうが大きいと私は考えます。

もちろん治療は薬だけとは限りませんが、この【3626】のケースでは、統合失調症の治療薬である抗精神病薬が奏功することが期待できると思います。一時エビリファイを処方されていたようですが、このケースで頓用という使い方には賛成できませんし、そもそもどのくらい飲まれたかが不明ですので、まだまだ抗精神病薬の治療を十分に試みたとは言えません。

なお、統合失調症前駆期疑いの段階での薬物療法のメリット・デメリットについては、【2007】統合失調症らしい症状が私にはあるのですが、悪化のおそれがないのなら病院には行きたくありませんなどをご参照ください。

(2018.2.5.)

05. 2月 2018 by Hayashi
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