【3457】30歳主婦。虚言癖とセックス依存で苦しいです。

Q: 30歳の主婦です。
結婚してから8年、子供はいません。夫婦仲は円満です。

10代の頃、うつ病とパニック障害になり、摂食障害も併発し、20~23歳頃までは入退院を繰り返していました。
うつやパニック障害の方は結婚を機に徐々に良くなり、今はストレスがたまった時に、病的ではない程度(と思っています)の気分の落ち込みややけ食いなどがある程度です。

今日ご相談したいのは、上記と関係あるのかないのかがわからないのですが、私の虚言癖?と依存症についてです。

小さい頃からしょっちゅう嘘をついてしまいます。
しかも、保身とか虚栄とかそういうあからさまなものではなく、本当に日常のささいなことから、大きなことまで。嘘をついて隠すようなことがない場面でもついてしまいます。
例えば夫に「今日の食事は何?」と聞かれて「もう○○を作ってる」という程度のささいなものです。

が、一回嘘をついてしまうと、その嘘がばれないようにしなきゃ、とあせり、嘘に嘘を重ねてしまいます。
以前は始まりは小さなことだったのに(夫にそろそろバイトを探したら?と言われたこと)、仕事が見つかったと嘘をつき、更にそれがばれるのが怖く、サラ金から借金をして給料をもらったように見せかけてしまったこともあります。
他にも数えきれないくらいのどうでも良いような嘘ばかりついてしまいます。
やめよう、やめよう、と思うのに、癖というか、無意識的に気付いたら嘘をついている、という感じで、嘘をついている瞬間はそれが嘘だという自覚もあまりありません。
とても苦しいです。自覚なくやってしまって、上塗りをしなくちゃいけない状態がとても苦しいです。
本当の自分がいったいどういう人間なのかわからなくなっています。
ネットや本を読んでみて、ミュンヒハウゼン症候群にも似ているようだと思いましたが、人に構われたいというより、何も目的がないのに嘘をつき続けている気がしてなりません。

依存症気味の傾向もあり、結婚前はサラ金からの借金を重ねて買い物をしていました。
今はセックス依存(というのでしょうか)の傾向があります。
セックスが好きなわけではないのに(むしろしたくない)、しないといけないような気分になり、出会い系サイトで相手を探してセックスする、ということをしてしまいます。終わったあとは罪悪感だけが募り、とても苦しいですが、会うまでの状態は、どっちかというと夢の中にいるような、すごくふわふわした感じです。
昔サラ金で借金をして買い物していた時も同じ感覚でした。
やめなくちゃいけないと思って、家事などを一日いっぱいやり続けると、多少はおさまります。
最近は一日数時間出会い系サイトを使ってメールをやり取りして、具体的に会う日まで決めてから、そういう自分が嫌になって、家事に没頭する、という毎日です。
夜もほとんど寝れません。

虚言と、セックス依存と、もしかしたら人格障害なのではないかと疑っております。

これは病的なことなのでしょうか。医師にかかった方が良いのでしょうか。

長くなって申し訳ありません。ぜひご見解を頂ければと思います。

 

林:
虚言と、セックス依存と、もしかしたら人格障害なのではないかと疑っております。

これら三つについて順にお答えします。
まず虚言について。

何も目的がないのに嘘をつき続けている気がしてなりません。

この一行に要約されている、質問者の虚言は、いわゆる「虚言のための虚言」であって、虚言癖、嘘つきは病気か に記した「病的な虚言」に一致しています。一種の病気と考えていいでしょう。

次にセックス依存について。

セックスが好きなわけではないのに(むしろしたくない)、しないといけないような気分になり、出会い系サイトで相手を探してセックスする、ということをしてしまいます。終わったあとは罪悪感だけが募り、とても苦しいですが、会うまでの状態は、どっちかというと夢の中にいるような、すごくふわふわした感じです。

セックス依存 (または sex addiction。直訳すれば「セックス嗜癖」です)という診断名は、現代の公式の診断基準には存在しませんが、上記の体験は、【3457】の質問者の状態がいわゆるセックス依存とされるものであるとして矛盾はないと言えるでしょう。

そして人格障害については、質問者がなぜ自分を人格障害かもしれないとお考えになっているかが具体的に書かれていませんが、おそらくいま自覚しておられる問題(虚言、セックス依存を含め)は、人格障害によるものではないかと漠然と感じておられるということだと思います。
それはある意味正しいです。すなわち、もしこの【3457】のケースを現代の診断基準にあてはめるとすれば、特定不能のパーソナリティ障害になるからです。(人格障害とパーソナリティ障害は全く同じです。Personality Disorderの訳語が、かつては人格障害が正式でしたが今はパーソナリティ障害が正式になったということにすぎません)

但し、おそらく将来においては、この【3457】のようなケースは、「特定不能」という雑多な分類項目ではなく、より独立性のある疾患に分類されていくと私は考えています。
【3457】の質問者が現在悩んでおられるいわゆるセックス依存は、質問者がかつて陥っていた買い物依存と関連性があると思います。さらには摂食障害とも関連性があると思います。ここでいう「関連性」とは、生物学的な関連性を指します。すなわち、症状を生んでいる脳基盤が共通しているということです。しかしまだそのようなコンセンサスが得られるまでの臨床データがないため、今のところは「特定不能」とするのが正しい態度ということになります。
なお

10代の頃、うつ病とパニック障害になり、

とのことですが、うつ病とパニック障害はどちらもこの【3457】のケースの診断にはあてはまりません。これらも、診断基準と単純に照合すればあるいは正しい診断ということになるかもしれませんが、この【3457】のケースの病態は、摂食障害 – 虚言 – 依存 という軸で捉えるべきであって、うつ病やパニック障害とは別の平面にあります。

これは病的なことなのでしょうか。医師にかかった方が良いのでしょうか。

20代の頃にかかっておられた医師を、再度受診されることをお勧めします。

(2017.6.5.)

05. 6月 2017 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, パニック障害, パーソナリティ障害, 性に関する問題, 精神科Q&A, 虚言