【2872】ARMSかもしれない入院中の息子の復学について

Q: 今年高校に入学した現在15歳の息子についてです。私は母親です。息子の父と叔父と祖父が双極性障害です。
6月半ば位から勉強とサッカーの両立のストレスがきっかけで悩み不調に陥りました。夏休み1週間前から学校に行けなくなり、夏休みにゆっくりと休んで復調したかに思えましたが、9月半ばから振り返しまた不登校になりました。
症状は意欲・集中力の低下と睡眠障害(昼夜リズム逆転)がメインで妄想などの思考の障害や人間関係の問題はありませんでした。際立った認知障害はないと思いますが、片づけが出来ない、怒りっぽいなど、人格が少し荒廃した印象でした。

現在、総合病院で統合失調症との診断で入院中です。入院はただ事じゃないと思った私(母親)が知り合いの精神科医に頼んで実現しました。
幸い薬が良く効いて先生曰く、順調過ぎる経過とのことで、母の目から見ても復調していると感じております。

そこで、ご相談です。復学を希望しているのに入院が長くなりそうな不安を抱え悩んでおります。薬が効いて経過良好なのに、復学を目指した療養というのは無理なんでしょうか?
このまま入院が長引くと出席日数が足りず、落第してしまう恐れがあり、それは息子の望むものではないので出来たら、避けたいのです。しかし、先生にお話ししても、理解が得られず、孤独を感じています。

悩むにつれ、いろいろな情報を収集した結果、息子はARMSの状態だったのではないか?今回、超早期介入できたのは幸いとして、このまま大人の標準入院治療?を続けていいのだろうか?と疑問に思いご相談させていただきました。
また今、調整中とのことで、薬の説明も詳しく受けてないのですが、仮に息子がARMSだった場合に今の薬物療法でいいのかどうかもご教示いただければ幸いです。
もしかしたら父と同じ双極性障害の可能性もあるのではないかと思ってしまいます。
どうぞよろしくお願いいたします。

今年の相談治療・内容
7月 近隣の心療内科3回
→睡眠薬のみの処方
8,9,10月 思春期が得意な神経科外来4回
→ストレス性のうつ状態としてドクマチール50mg+漢方
10月末から都内総合病院入院中
→統合失調症との診断でコントミン、リントン等内服

 
林:
悩むにつれ、いろいろな情報を収集した結果、息子はARMSの状態だったのではないか?

入院前の時点での記載からみて、ARMS (At Risk Mental State ; 【2007】統合失調症らしい症状が私にはあるのですが、悪化のおそれがないのなら病院には行きたくありませんを参照してください)という推定は妥当だと思います。ただ入院してまもなく統合失調症と診断されたとのことですので、入院前の時点ですでにARMSのレベルは超えており、統合失調症といえる状態であった可能性も高いと思います。但し、

もしかしたら父と同じ双極性障害の可能性もあるのではないかと思ってしまいます。

これもまた妥当な質問で、15歳というこの【2872】のケースの年齢においては、当初は統合失調症と診断されていたが後の経過をみると双極性障害であった、または逆に当初は双極性障害と診断されていたが後の経過をみると統合失調症であった、ということが少なからずあります。
この【2872】のケースに双極性障害の可能性がどのくらいあるかについては、そもそも統合失調症と診断された根拠となる具体的症状の記載がないのでわかりません(もし入院前の状態として記載されている症状のみであれば、ARMS疑いとはいえても統合失調症と確定診断することはできませんので、入院後の詳しい診察により、他の症状が明らかになったと強く推定できます。しかしその肝心な「他の症状」の記載がないのでわかりません)。

幸い薬が良く効いて先生曰く、順調過ぎる経過とのことで、母の目から見ても復調していると感じております。

診断がいずれであるにせよ、治療の効果が出ていることは明らかで、喜ぶべき経過だと思います。

そこで、ご相談です。復学を希望しているのに入院が長くなりそうな不安を抱え悩んでおります。薬が効いて経過良好なのに、復学を目指した療養というのは無理なんでしょうか?

そんなことはありません。15歳という年齢で学校を長期に休むことは、その後の人生にかなりの影響をおよぼす可能性は大きいですから、いかなる病気であれ、経過がよければなるべく早い復学を目指すのが当然です。

このまま入院が長引くと出席日数が足りず、落第してしまう恐れがあり、それは息子の望むものではないので出来たら、避けたいのです。しかし、先生にお話ししても、理解が得られず、孤独を感じています。

なぜ主治医が復学を目指して動いてくださらないのか、不可解です。
しかし理由として考えられるのは、

母の目から見ても復調していると感じております。

といっても実はそれほど良い経過ではなく、

幸い薬が良く効いて先生曰く、順調過ぎる経過とのことで、

という医師の言葉は母親を安心させるためのもので、実は医師は順調とは全く思っていないという可能性を指摘することができます。

また、

このまま入院が長引くと出席日数が足りず、落第してしまう恐れがあり、それは息子の望むものではないので出来たら、避けたいのです。しかし、先生にお話ししても、理解が得られず、孤独を感じています。

この文章はやや曖昧・多義的で、医師の具体的な反応が不明確です。
つまり、「理解が得られず」というのは、質問者(母親)の話を文字通り理解してもらえないのか、それとも、質問者(母親)の希望を医師が受け入れてくれないことを質問者は「理解が得られず」と言っているのかが不明です。しばしば患者本人や家族は、医師が自分の希望を聞き入れてくれないと「理解が得られない」「聞いてくれない」等と不満を述べるものですが、実際にはその「希望」が、病状に照らすと不合理であるというケースもしばしばあるものです。

また、

今回、超早期介入できたのは幸いとして、このまま大人の標準入院治療?を続けていいのだろうか?と疑問に思いご相談させていただきました。

いまの入院治療が「大人の標準入院治療」であるか否かは不明ですので、「続けていいのだろうか?」というご質問に回答することは不可能です。

また今、調整中とのことで、薬の説明も詳しく受けてないのですが、仮に息子がARMSだった場合に今の薬物療法でいいのかどうかもご教示いただければ幸いです。

ARMSの場合、薬物療法をどのようにすべきかは精神医学でまだ結論の出ていない問いですが、この【2872】のケースはすでに統合失調症という診断がついている以上、ARMSの薬物療法をめぐる問題は無関係です。統合失調症の薬物療法が、【2872】の適切な薬物療法ということになります。
そしてこの【2872】に現在行われている薬物療法が適切かどうかについては、(1)精神症状の具体的な記載がなく (2)薬の量の記載がない ので回答不能です。

(2015.1.5.)

05. 1月 2015 by Hayashi
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