【4667】主治医の頻繁な交替 (【4622】のその後

Q: 【4622】でご回答をたまわった60代男性です。お手数をおかけしました ありがとうございました

質問1
これまで15年ほど入退院を繰り返しましたが、主治医の変更(ドクターの他の病院への異動により)が時折りあり合計4人の主治医を経験しました。
これは普通のことでしょうか? 最初の主治医ーー入院の適否を 決めて下さった ドクターは3か月で他の大学病院へ移り 私も他の入院患者もおしなべて主治医の変更には動揺しましたーーハッキリ言って迷惑でした

質問2
患者は主治医を選べないシステム
これは他の病院でもよくあることでしょうか?
10人ほど常勤ドクターがいてお一人だけ入院患者に非常に評判のよい医師がおられましたー ー極力 薬は出さず  患者に 日記ーー 例えば ウツになった 上司のひとこと その後の経緯  それに対する自分の心象  日記は 詳しければ詳しいほどいいーー  相部屋で 同室 ウツ病患者の 今日の面談はよかったー との話を脇で聞いて 羨ましくてなりませんでした

質問3は
主治医によって会社の総務部長に提出する診断書の標題ーーつまり 病名が くるくる 変わりました
最初の主治医はーーーー抑鬱状態
これは オブラートにくるんだ 含みのある もので 素直に ありがたく 思いました
3人目の主治医はーーーー双極性障害 2型
これは正しいよう 感じます
4人目の主治医はーーーー1通目は 発達障害   2通目は アスペルガー

このようなバラツキは よくあることなのでしょうか?ーー私という一人の患者に対してーーーー 入院中病態が変化することはあるとしても   診断書を受け取った総務部長も困惑したことでしょう

 

林: 長年にわたる闘病生活で、必ずしも満足のいく医療が提供されていないことへのご苦悩、お察し申し上げます。
ただし以下の回答は、質問者ご本人のお気持ちへの配慮はせず、事実のみを示します。

質問1 主治医の交替について
15年間で4回の主治医交替は決して頻繁とは言えません。

質問2  主治医を患者が選択できないことについて
病院ではそれはごく普通です。患者が自由に主治医を選択していたら、病院内での治療は成り立ちません。患者には病院を選ぶ権利はあっても、ひとたび病院を選んだ後には、その中での主治医を選択する権利を要求するのは非現実的です。

質問3  診断名の変遷について
ご指摘はもっともで、このように診断名が変遷するのは不合理です。他方、長年の経過においては診断名が変遷するのがむしろ適切な場合もありますが、この【4667】の質問者の診断名の変遷は不適切と言えるでしょう。このような事態が発生する背景には、精神障害の多くは現在では原因が特定できず、症状に基づいて(主として症状に基づいて)診断名がつけられているという事情があります。操作的診断基準(DSMなど)はこのような事態の解消を目指して開発されたものですが、それでも客観性は見かけのものにすぎず、同じ診断基準を用いても医師によって診断が異なる場合が少なからずあります。ただし逆に、純粋に症状だけに基づいて一律に診断名がつけられることも不合理ですので、ある程度までは医師による診断名の違いは合理的かつ健全な状態であるとは言えます。この【4667】の質問者の診断名の変遷は、上に述べた通り結論としては不合理だと私は考えますが、「抑鬱状態 – 双極2型障害 – 発達障害 – アスペルガー」という変遷は、医師による考え方の違いを反映している部分もあるとみる余地があることはあります。

(2023.5.5.)

05. 5月 2023 by Hayashi
カテゴリー: 発達障害, 精神科Q&A, 躁うつ病 タグ: |