【4647】いったん神に戻り、また神じゃなくなりました(【4623】、【4628】、【4636】のその後)

Q: 【4623】私は統合失調症ではなく本物のキリストなのではないか  、【4628】自分が神であると思う私と、そうでない私とが行ったり来たりです【4636】今日、完全に神じゃなくなりました  の22歳女性です。
実はあの投稿をしたその後、妄想が消えたことから一度退院が決まり、ろれつが回らないという副作用が出ていたことから主治医の判断でアリピプラゾールを断薬し、炭酸リチウムのみになっていました。
しかし、完全に断薬した後に、再び自分が神であるという確信が出てきてしまい、また大学にメールを送ってしまって迷惑をかけてしまいました。
後にアリピプラゾールを再開し、今に至ります。

果たしてこの主治医の判断は適切だったのでしょうか…。

さて、アリピプラゾールを再開したときの話なのですが、夕食後薬を飲んで10分ほどで自分が神であるという確信が揺らいだのです。これは薬が効く早さとしては早すぎると思いませんか。

その時の話です。
私はそれ以前は「自分は神であり、未来は完璧に予測できる」と考えていました。
私は、どういうわけか、病棟で良く話しかけてくれるとある患者さんが、近いうちに亡くなってしまうのではないかと思ってました。
私は絵が得意で作業療法でよく絵を描いていたのですが、その患者さんの死は止められるものではないから、せめて亡くなる前に絵をプレゼント「するのだろう」、と思っていました。
しかし、私は絵をプレゼントすることをすっかり忘れてしまい、気がついたらその方は退院になっていました。
このことから、私は未来を予測できていないと気付きました。
これがアリピプラゾールを再開した10分後の出来事です。

もうすぐ退院で(時期は未定ですが、はっきりと主治医から退院の話が出ました)、今後も服薬を続けていれば寛解に向かうものだと信じているのですが、それでも、自分の人生においての目標がうつ病の発症メカニズム解明であることは変わらない…はずです。(現段階では断言はできませんが。)

しかし不思議なものですね。あれだけ強く信じていたものがあっさり消失してしまうなんて。何も信じられなくなりそうです。

それと、私が大学に「自分は神である」といった趣旨のメールを何度も送っていたことで、大学の先生方は精神的に疲弊してしまっているようです。
(前に書いたように、精神疾患の研究をしようと考えているため)人を救うことを目標にしている自分が、人を傷つけてしまったという罪の意識に苛まれています。

私は自閉症スペクトラムの診断も受けていて、今回の件は、主治医曰く「特性も多少は関係しているが、多くは症状が後押ししたものだろう」とのことです。
学校からめっちゃ怖い文書が届いたのですが、そこには「あなたの行動は社会的通念を逸脱している」と書かれていました。(幸い処分の対象にはならなかったのですが。)

「社会的通念」とは一体何でしょうか。
「自分が神である」という考えが社会通念から外れていることは私も分かっていました。
でもそれに従うしかありませんでした。だって、それが神のお告げだったから。困ったときは自分の声に従うしかないと思うのですが、それさえ信じられないとなると、もう何も信じられませんね。

 

林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。

実はあの投稿をしたその後、妄想が消えたことから一度退院が決まり、ろれつが回らないという副作用が出ていたことから主治医の判断でアリピプラゾールを断薬し、炭酸リチウムのみになっていました。
しかし、完全に断薬した後に、再び自分が神であるという確信が出てきてしまい、また大学にメールを送ってしまって迷惑をかけてしまいました。

アリピプラゾール中断による再発(この場合、正確には「再燃」というべきと思われますが、煩雑になりますので以後は「再発」で統一します)です。中断すれば再発するのは当然です。

後にアリピプラゾールを再開し、今に至ります。

果たしてこの主治医の判断は適切だったのでしょうか…。

アリピプラゾール中断が再発に繋がったことは明らかです。また、アリピプラゾールを中断すれば当然に再発することは当然に予想できたことです。
中断の理由は副作用とのこと、その副作用の程度が不明ですので断言はできませんが、中断ではなく、徐々に減らすとか、あるいは別の薬に変更するというのが、このような場合の適切な方法であるというのは精神科の常識です。(但し、副作用があまりに強い場合には中断もありうる方法です。入院中でもあり、再発してもすぐに対応できると主治医の先生は判断されたのかもしれません)

夕食後薬を飲んで10分ほどで自分が神であるという確信が揺らいだのです。これは薬が効く早さとしては早すぎると思いませんか。

10分でそこまでの薬理効果が出ることはまずありえません。「確信が揺らいだ」の「揺らいだ」の程度が問題ですが、ある程度の揺らぎであれば薬とは関係なく十分に起こり得ますので、この時点では単なる自然経過としての揺らぎにすぎず、その後に薬の効果がはっきりと出てきたと考えるのが最も合理的でしょう。

「自分が神である」という確信は消えた、または非常に弱くなってはいるものの、まだまだ質問者の精神病症状が続いていることがこのメールから読み取れます。
引き続き慎重に治療を受け続けてください。

(2023.3.5.)

その後の経過 (2023.9.5.)

05. 3月 2023 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 薬の副作用 タグ: , , |