【4644】意欲的になるはずの薬で寝たきりになりました

Q: 30歳の主婦です。うつ病と診断されて1年間ほどルネスタ錠2mgとイフェクサーSRカプセル75mgを処方されていました。

イフェクサーに関して「元気が出て意欲的になるお薬です」と説明を受けていたのですが、飲むととにかく体がだるくて、一日中寝てばかりの生活になってしまいました。お薬を飲む前は、座って過ごすことが辛いと思うことはなかったのですが、お薬を飲みだしてからは体を起こしているのもしんどくて、用がなければひたすら寝ている生活でした。

元々の性格からして、一日中寝てばかりではイライラしたり焦ったりしそうなものなのですが、そこはお薬の効果?なのか、何とも思わずただぼーっと過ごす日々でした。医師にも寝ていればいいと言われたので特に気にもしていませんでした。

ところが、その後妊娠をして服薬を止めるように指示されて、突然服薬をやめたのですが、だるさがなくなって起き上がっていられるようになり、かといって深刻にイライラするとか落ち込むということもなく、あの薬は一体何だったのだろうと思うようになりました。

今は普通に嫌なことがあってムッとすることはあっても、何日もそれを引きずるだとか、落ち込んで自殺等の極端な行動に出たりだとかは全くありません。
ただひどく疲れやすくて、スーパーに買い物に行ったらダウンして、料理を作ってもダウンして、掃除をしてもダウンして…といった具合で、体がちっとも使い物になりません(それでも服薬中よりはずっと動けるのですが)。「ちょっと疲れたなぁ」ではなくて、インフルエンザで高熱を出している時のようなだるさで、無視して無理に動くと本当に高熱が出ます(無理するなと言われているので、出来るだけ大人しく過ごそうとはしています)。

そんなわけで、授乳期が終わったら、また服薬を再開する予定になっているのですが、前のお薬は本来の効能通りに働いていたのだろうかということが知りたくて質問しました。

 

林: 薬Aを飲んだら状態Bになった。このとき、AはBの原因なのか?   この種の質問はよくあり、また、ご質問したくなる気持ちはよくわかりますが、このような場合、最低限でも、Aを飲んだ具体的な期間についての情報が必要です。この【4644】にはそれが記されていませんので、「なんともいえません」が最も正確な答えになりますが、とりあえずこの問題は棚上げにすることにしてお答えしますと、
(1)    薬の効果として認められているものは、多くの人にとっての効果ということであって、例外はいくらでもある。
(2)    Aの後にBが発生したというとき、そのことをもってAはBの原因とはいえない。BはAより前に原因があって、たまたまタイミング的にAの後に発生したにすぎないということがいくらでもある。
の二つがまず一般論として言えることです。
これを【4644】にあてはめますと、薬はイフェクサーですが、イフェクサーについてももちろん(1)は言えることです。
また、(2)は世の中のすべての事象について言えることですが、病気の場合、治療薬を開始しても、開始前からの病気の進行がその治療薬でくいとめられなければ、治療薬の開始後に悪化することは十分にありえ、その場合、治療薬が悪化の原因のように表面上は見えることになります。うつ病において、悪化の経過中に受診し、最初に処方された抗うつ薬の強さが不十分であればこういうことはごく普通に発生することです。

ただ【4644】の場合は、イフェクサーを中止したら回復したとのことですので、上の(1)にあたるケースである可能性が高いと思われます。
したがいまして、

授乳期が終わったら、また服薬を再開する予定になっているのですが、前のお薬は本来の効能通りに働いていたのだろうかということが知りたくて質問しました。

イフェクサーを再開することはお勧めできません。服薬を開始するのであれば、別の薬を試みるほうが適切だと思います。

(2023.3.5.)

05. 3月 2023 by Hayashi
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