【4472】私は精神病になってしまったのだと思います(【3882】、【4129】のその後)

Q: 【3882】インフルエンザに罹患した後、急性一過性精神病性障害と診断されました【4129】主治医はせん妄ではなく一生服薬が必要であると断言しています でご回答いただいた30代女性です。見ず知らずの私の質問に、丁寧にご回答くださり、本当にありがとうございました。
あれから3年以上たちますが、今も変わらずオランザピン2.5mgを半錠にしたものを飲み続けています。
主治医は時間がたってから私が「緊張病」であると伝えてきました。カルテには「統合失調感情障害」と書かれていました。典型的な統合失調症とは異なるものの、似たようなもので、やはり一生服用が必要な状態なのだと思います。林先生には、私の主観的な症状しか伝えられておらず、すみません。せん妄であって欲しかったですが、私はやはり一線を踏み越えて精神病になってしまったのだと思います。

最初は私も自分が統合失調症だとは認められませんでしたが、統合失調症に関する本を読むにつれ、当てはまることもたくさんありました。たとえば妄想知覚がありました。眠れずとてもつらかったとき、物事をなすための正しい順番や何が本当で何がうそか分からなくなったのですが、夫の笑った顔をしたときが正しい行動だ、夫に正しい順番を教えてもらいその通りにすれば眠れるはずだ、私はおかしくなっている、という、ものすごい「ひらめき」がありました。しかし実際にはどうしても眠れませんでした。夫が精神科でもらっきてくれた薬を持ってきてくれたときも、意に反して夫をものすごく疑うようなことを言ってしまったことを記憶しています。
拒否の態度を示したと思います。そして、ブツブツと独り言も言っていました。自分で自分をカウンセリングするような内容の独り言で、それを言えば眠れるのではないかと思っていたからです。
私は統合失調症かあるいはそれに類縁の、精神病になってしまったのだと思います。
主治医は私のことを、「慌てるような症状だった。急性の精神病状態だった」と言いました。
とても辛いですが、受け入れるしかありません。

今はフルタイムではありませんが仕事に復帰しています。仕事をしたら再発するのではないかとかなり気をもんでいましたが、今のところ何ともありません。普段誰にも頼らず家事も育児もこなせています。本も新聞も読めますし、人とのコミュニケーションも問題ありません。本当にありがたいことです。
主治医は精神病になった人はもう「頑張れない」と言いました。そうなのかもしれません。無理しすぎは禁物なのだろうと思います。
今はコロナの関係で主治医を変えざるを得なくなったのですが、新しい病院でも変わらずオランザピンを処方してもらっています。
毎日薬を飲みながら、仕事に行き、子育てをし、家事をこなしています。病院に通い続けなくてはいけないことも、悲観的にとらえずに、相談できる味方が増えたと思い、あまり重く受け止めないようにしたいと思います。

統合失調症の人だろうと思われる方の犯罪が世間を騒がせている新聞記事やニュースを見るたびに、本当に辛いですが、今自分が症状なく過ごせていることに日々感謝して、これからも再発に気をつけて生きていきたいと思います。

ご回答いただいて本当にありがとうございました。

 

林: その後の経過をご報告いただきありがとうございました。
今回のメールを拝読した後も、私の回答は前回【4129】と大きく変わることはありません。すなわち、「せん妄と何らかの精神病の両方の可能性があります」というものです。

今回新たに報告いただいた症状、すなわち、

物事をなすための正しい順番や何が本当で何がうそか分からなくなったのですが、夫の笑った顔をしたときが正しい行動だ、夫に正しい順番を教えてもらいその通りにすれば眠れるはずだ、私はおかしくなっている、という、ものすごい「ひらめき」がありました。

この体験は、質問者がご指摘の通り、かなり統合失調症らしい症状です。同じころに独り言が激しかったということも、統合失調症らしさを感じさせる症状です。
ただし【4129】に記した通り、せん妄でも統合失調症と同様の症状が現れることがあり得ます。その頻度は少ないですが、あり得ることはあり得ます。ですから、いかに統合失調症らしい症状があったとしても、それが一過性であり、かつ、せん妄が出ても不思議はない時期のみに見られた場合は、せん妄を否定することはできません。ただ、その体験の記憶がかなりよく保たれている点は、せん妄らしくないと言うことはできます。それでもやはりせん妄を否定することまではできません。

ですから当時の症状がいかに詳しく判明しても、最終的にせん妄の可能性を否定することはできません。しかし今回のメールの情報からは、せん妄よりも精神病の可能性の方が高まったとまでは言えます。これもまた【4129】に記したことですが、加えて、主治医の先生のご判断も大いに重視すべきでしょう。

私は統合失調症かあるいはそれに類縁の、精神病になってしまったのだと思います。

なってしまった」と断言はできませんが、【4129】の情報の時点よりはその可能性が高まったと言えます。診断名については、「統合失調症かあるいはそれに類縁の、精神病」という含みのある表現が適切だと思います。

3年が過ぎた現在もオランザピンを続けておられるとのこと、それが適切であったか、今後、減薬から服薬中断を試みるべきか、いずれも判断は難しいです。今後の服薬方針については、主治医の先生と相談しつつ、慎重に決定されることをお勧めします。

(2022.3.5.)

05. 3月 2022 by Hayashi
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